エキシマーUV硬化のソフトタッチ木製キャビネット用塗料とは、短波長光(172nmの真空紫外または254nmのUVC)を塗膜の最表層にだけ照射して硬化させ、表層と下層の収縮差によって生じる1〜3マイクロメートルの微細なシワで、マット材を添加せずに低光沢と滑らかな質感を同時に得る放射線硬化型のトップコートのことをいいます。従来の「マット粉を足して光沢を落とす」設計思想との違いは、光沢が制御可能なSurface形状から生まれる点にあり、粒子の散乱に依存しません。
要点
- つや消しは塗膜Surfaceの1〜3マイクロメートルのシワによる乱反射で作り出します。マット粉由来の沈降、もやい、濃い色の上にかぶる白みは発生しません。
- 3段階にはそれぞれ役割があります。LED予備硬化は下層の架橋の進み方を抑え、エキシマーランプが表層の収縮幅を刻み、水銀ランプで全体の架橋Densityを仕上げます。いずれかがウィンドウを外れると、光沢の戻り、ベルベット感の低下、ひび割れ、層間剥離として現れます。
- 172nmは真空紫外で、160〜240nmの帯域が酸素をオゾンに変えるため窒素雰囲気(120〜200m3/h)が必須です。254nmのUVCは空気中で照射できるため、平板の量産ラインではこちらの採用例が多くなっています。
- 合否は数値で決めます。測定角度はGB/T 9754-2025に従い10GU未満なら85°で測定、手触りは動摩擦係数0.1未満を目安、耐久性は摩耗後の光沢変化を主判定とし、クロスカットと鉛筆Hardnessを併せて確認します。
1. 主要データ
- 光子エネルギーと侵入深度:172nmは約7.2eVで侵入深度100〜500nm、254nmのUVCは約4.89eVでより深く届きます。
- シワ層の厚みは1〜3マイクロメートル、トップコートの推奨全厚は20〜30マイクロメートル、ロールコーティングの実塗装量は30〜45g/m2です。
- エネルギーウィンドウ(254nm系):395nm LED予備硬化100〜200mJ/cm2(生産では1000〜4000mJ/cm2の範囲)、表層照射50〜400mJ/cm2かつ光強度5〜20mW/cm2、表層反応時間10〜120秒、後段の高圧水銀ランプUVA600〜2000mJ/cm2かつ光強度50〜500mW/cm2。
- 光沢は60°測定で100GU近くから1〜20GUまで低下します。量産の目標値は2〜5GU、ハイクラス建具では8GU以下が要求されるのが一般的です。
- 手触りと指紋対策:塗膜の動摩擦係数は0.1未満。皮脂の主成分であるパルミチン酸のSurfaceエネルギーは約38mN/mあるため、塗膜側を25mN/m以下まで下げないと油は広がったままになります。
- 機械・耐性指標の目安:鉛筆Hardness2H〜4H(GB/T 6739)、クロスカット付着0級(GB/T 9286)、RCA紙帯摩耗300回以上でテカリなし、99.7%エタノール500回拭きで塗膜異常なし、60℃×相対Humidity95%×72時間のHigh Temperature高湿および有機酸・日焼け止め・ハンドクリームのスポット試験で異常なし。
- 設備条件:172nmエキシマーランプの有効寿命は1000〜3000時間。254nmランプは点灯後10〜12分で出力が安定してから連続生産に入ります。
- 測定Precisionの目安:GB/T 9754-2025では85°の繰返し限界1GU、再現性限界2GU(60°は2GUと3GU)。試験片はTemperature(23±2)℃・相対Humidity(50±5)%で16時間以上調整し、5か所以上を測定します。
2. 塗膜はどうやってつや消しと手触りを作るのか
2.1 3段階硬化の役割分担
この方式は1本のランプで「塗料を乾かす」考え方ではありません。まず395nmの低エネルギー予備硬化で内部にゲルの骨格だけを作り、下層は未架橋のまま残します。続いて254nmまたは172nmの短波長を当てると、最も薄い表層だけが重合して収縮し、下層は追随しないため、Surfaceに連続したマイクロ・ナノサイズのしわが引き伸ばされます。最後に高圧水銀ランプのUVAで中層・下層を架橋させ、Hardness・付着・耐薬品性性を取り戻します。3つのエネルギーは連動変数で、予備硬化が強すぎると下層が固定されて表層が縮めず光沢が戻り、弱すぎるとしわが潰れてベタつきになります。
2.2 172nmと254nmの使い分け
172nmは光子エネルギーが約7.2eV、侵入深度が100〜500nmと浅いため「まず表層」の効果が強く、光沢を2GU未満まで落としながら、微細な擦り傷の熱修復性も残せます。代償に窒素が必要です。160〜240nmの帯域は酸素をオゾンに変えるため、流量を120〜200m3/hに保つ必要があり、設備投資とランニングコストが上がります。254nmは空気中で照射でき設備費は抑えられますが、収縮の均一性は配合設計に依存します。樹脂の官能基度と光開始剤系を調整して、はじめて2〜5GUの超低光沢と滑らかさを両立できます。
2.3 官能基度の三すくみ:マット・耐摩耗・付着
公開されている水系エキシマーUV塗料の処方には、質量比で二官能水系ウレタンアクリレート20〜30%、多官能(官能基度4〜16)ウレタンアクリレート25〜35%、UVモノマー35〜40%、光開始剤3〜6%、添加剤0.5〜1%という範囲と、二官能対多官能の推奨比(4〜6):(5〜7)が示されています。多官能を増やすと収縮がきつくなりマット性と耐摩耗は向上しますが、極性基が消費されて下地との結合が減り付着は低下します。二官能を増やすと内部応力は下がり付着は改善しますが、光沢は回升します。このトレードオフは設計制約として扱い、1枚の見本で判断すべきではありません。
3. Applicationウィンドウ
| パラメータ | 標準範囲 | 範囲外での現れ | 修正の方向 |
|---|---|---|---|
| トップコートの実塗装量 | 30〜45g/m2(ロール) | 過少は手触りが荒く光沢が高い、過剰はひび割れとベルベット感の低下 | 先に塗装量を固定し、後にエネルギーを調整。二つ同時には触らない |
| LED予備硬化エネルギー | 100〜200mJ/cm2、または装置出力の20〜40% | 高すぎると消光せず、低すぎるとベタつきと後のテカリ | 85°光沢と指触判定を併せ、10%刻みで絞り込む |
| 254nm表層照射 | 50〜400mJ/cm2、光強度5〜20mW/cm2 | 過剰は氷花模様・亮光点・層間剥離、不足はしわが立たない | ランプ通過速度を落とすと実効線量が上がりますが、ライン速度と連動で判断 |
| 後段水銀ランプUVA | 600〜2000mJ/cm2 | 硬化不足だとHardnessと耐薬品性性が落ち、拭き跡が白くなる | 鉛筆Hardnessと溶剤拭き回数から硬化不足を逆算 |
| レベリングと面板Temperature | レベリング域45〜50℃、塗料Temperatureは約30℃ | 面板が冷たいと水分が残り、面内で光沢がばらつく | フラッシュオフで水分を抜いてからエキシマー工事へ |
| 窒素流量(172nm) | 120〜200m3/h | 流量の揺れは同一パネルの中央と端の光沢差になる | シフトごとに流量を記録しSPCで管理 |
3.1 予備乾燥と酸素阻害
水系エキシマーは残留水分に敏感です。フラッシュオフが短いと蒸気が表層を持ち上げてしわの形が乱れ、局所的な亮光点と「ざらつき」が出ます。ラジカルUV硬化は酸素阻害も受けるため、空気に触れたSurfaceは粘ったまま残ります。172nmの窒素パージはオゾン回避とSurface阻害低減を兼ねており、254nmで空気中にする場合は開始剤濃度を上げるか3ランプ構成で補います。その分、耐黄変と熱安定性への要求は高くなります。
3.2 ラインにエキシマー工事を追加すべきか
判断は「もっとマットにできるか」ではなく、3つの制約で行います。ロールラインにランプ設置余地と窒素配管のスペースがあるか、製品が平面パネルセンターか、熱修復が効かなくなった後の再塗装コストをアフターサービスで許容できるかです。異形部材はスプレーが主体でしわの均一性を保ちにくいため、セルフマットポリウレタン分散体にマット材を併用する方がSafetyです。
4. マット材併用方式との比較
| 比較項目 | 水系/UV+マット材 | エキシマー物理消光 |
|---|---|---|
| 光沢の安定性 | 3〜7GU、ロットやパネルごとにもやいが出やすい | 0〜5GU、均一性はランプ順で制御 |
| 透明感 | 粒子による白み、黒の深みが落ちる | 粒子なし、木目と濃色の再現がそのまま |
| 手触り | ワックス依存で乾いた感触、粒状感 | 連続した微細形状、摩擦係数0.1未満の滑らかさ |
| 摩耗後 | 粒子が均されてテカリが出る | 架橋層が形状を固定し、光沢変化は小さい |
| 初期投資 | 通常の調色以外に不要 | エキシマー装置、窒素(172nm)、ランプ寿命管理 |
| 典型的な不良 | 沈降、光沢のズレ、触感の不揃い | ひび割れ・層間剥離、氷花模様、耐薬品性性の低下 |
5. 検証と受入
5.1 光沢の測定角度と面内均一性
GB/T 9754-2025(ISO 2813と同等、2026年1月1日施行、2007年版を代替)は測定角度を次のように分けます。70GU超は20°、10〜70GUは60°、10GU未満は85°です。超低光沢パネルは85°の帯に属するため、60°で読むと繰返し限界2GUが目標範囲と同じオーダーになり、判定の半分を装置ノイズに譲ることになります。受入角度は85°、参考値として60°を記録し、5点位または9点位の配置と許容範囲を技術協定に明記してください。
5.2 手触り・指紋対策・汚染
手触りを規定した国家規格は無いため、業界では荷重・布種・ストロークを固定した摩擦試験(例:1kg荷重、クリーンクロス、1800mm/min)に官能評価を加えて運用しています。指紋対策はSurfaceエネルギーの話に帰着します。皮脂の脂肪酸が約38mN/mであるのに対し、塗膜が25mN/mを割ると油は点状に残って広がりません。水の接触角とヘキサデカンの接触角を併せて報告し、耐汚染・耐薬品性はGB/T 4893シリーズとEN 12720の手順で、コーヒー・口紅・洗剤・エタノールを標準試薬として確認します。
5.3 テカリ戻りが耐久性の本体試験
契約条件には初期光沢だけでなく、摩耗後の光沢差を明記してください。RCA紙帯300回または500回、あるいは99.7%エタノールでの拭き試験後に85°光沢を再測し、白化やテカリ帯が出ないか確認します。収納用パネルではさらに60℃×相対Humidity95%×72時間、日焼け止めとハンドクリームの放置試験も通すと、「初日は美しいが3か月でまだら」を防げます。
6. よくある質問
Q1:マット材なしで安定した2GUはどう作るのですか。
粒子散乱ではなく表層の収縮で作り出します。塗装量・予備硬化エネルギー・エキシマー線量をひとまとめに固定し、単一要因試験を経た上で応答曲面に進み、85°光沢とSurface粗さの両軸でウィンドウを絞り込んでください。
Q2:254nmは172nmを完全に置き換えられますか。
運用費は有利ですが、254nmは侵入が深く「まず表層」の効果が弱いため、同じ樹脂でもランプ順が違えばしわの形は変わります。ランプの交換は処方の交換ではなく、官能基度と開始剤の再設計が必要です。
Q3:同じロットで中央だけマット、端だけ明るいのはなぜですか。
172nm系ではランプ出力または窒素流量の幅方向の不均一が主因で、端部の塗装量が厚すぎる場合もあります。反射板やロールクリアランスを触る前に、9点位の光沢マップと塗装量の実測を突き合わせてください。
Q4:ソフトタッチ面はアルコールで拭いてよいですか。
99.7%エタノールでの軽い清掃は許容ですが、強い擦りを繰り返すことや研磨スポンジは避けてください。拭いた箇所が鏡面状に光る場合、その箇所のしわが摩耗で均された結果であり、汚れではなくテカリ戻りと判断します。
Q5:ひび割れや層間剥離が起きたら、どこから調べますか。
まず塗装量がウィンドウ内か、後段UVAが多すぎないかを確認します。次に下塗り・上塗りの組み合わせと層間濡れ性、最後にパス回数を点検してください。ひび割れは収縮応力の過大、層間剥離は付着の問題で、修正方向は逆になります。
Q6:水系エキシマーならVOCゼロですか。
いいえ。水分散系ですが成膜助剤や一部助溶剤を含むため、VOCはWood用塗料に関するGB 18581-2020に従って測定し規定値以内であることを確認します。溶剤フリーの分散工事で大幅に低減できますが、公表値は第三者検査機関の成績書で裏取るべきです。
Q7:モールディングや成形扉にも対応できますか。
平面パネルのロールまたはカーテンコートが最も安定してしわ形状を保てます。異形部材はセルフマット樹脂をスプレーして5〜10GUを受容するか、フィルム圧着方式を選び、Weather-Resistant性と補修性を改めて評価してください。
参考文献・根拠
- GB/T 9754-2025『色漆および無色透明塗料の20°、60°、85°光沢の測定』20256月30日発表、2026年1月1日施行、GB/T 9754-2007を代替、ISO 2813と同等。
- GB 18581-2020『Wood用塗料中の有害物質の限度』、GB/T 6739 鉛筆Hardness、GB/T 9286 クロスカット法、収納Surfaceの耐汚染・耐薬品性に関するGB/T 4893シリーズおよびEN 12720。
- 羅錦栄・苒姍姍・劉貢鋼ほか「254 nmエキシマーUV硬化技術に基づく木製キャビネット用ソフトマット塗膜の官能Performanceへの影響要因研究」、雑誌『収納とIndoor装飾』2024年第2号(塗装量・LED予備硬化エネルギー・254nm線量が粗さと85°光沢に与える単一要因および応答曲面の試験結果)。
- 中国特許出願202411427437『エキシマーUVソフトタッチ塗料およびその塗膜の製造試験方法』(20251月2日公開):395nm LED 1000〜4000mJ/cm2、254nm 50〜400mJ/cm2・光強度5〜20mW/cm2、水銀UVA 1000〜2000mJ/cm2、表層1〜3マイクロメートルのしわ、動摩擦係数0.1未満。
- 中国特許出願202610751251『エキシマーUV塗料とその製造試験方法および用途』(2026年8月23日公開):二官能と多官能ウレタンアクリレートの配合比率と付着性のバランス。
- 業界で公開されているApplicationデータ:172nm系の窒素流量120〜200m3/h、エキシマーランプ寿命1000〜3000時間、ロール塗装ソフトタッチ上塗りの実塗装量30〜45g/m2、量産での3段階エネルギー設定。
最終更新:2026-10-20
署名:Kexin New Materials(広東)有限公司/Kexin New Materials (Guangdong) Co., Ltd.|本稿の数値は公開規格・特許文献・業界試験データに基づくB2B技術情報であり、ロットの品質保証ではありません。具体的な的な指標は合意した技術協定および第三者検査成績書を優先します。取引条件はEXW/FOB。