PE不飽和ポリエステルファニチャー塗装(ポリエステルクリアー、通称PE)は、主剤である不飽和ポリエステル樹脂(UP-R)を、スチレンを反応性希釈剤兼架橋モノマーとして用い、開始剤と促進剤によるラジカル系でRoom Temperature架橋硬化させる三成分反応形の木部塗装です。固形分が非常に高く、1パスで厚く平滑な塗膜を形成できるため、高光沢の平板ファニチャー、楽器筐体、大理石風トップなど「ピアノフィニッシュ」狙いの製品に用いられます。水系・PU・UVとは別系統の樹脂ルートです。
要点(1分)
- PEは「樹脂+コバルト促進剤+過酸化物開始剤」。ラジカル共重合で樹脂の二重結合とスチレンが三次元網目になる際、低分子がほぼ出ないため、理論固形分は100%に近づきます。
- 鍵はゲル時間です。Room Temperature(25 ℃)で目安18〜24分、Temperatureが5℃上がるごとに約35〜40%短縮する指数依存を示し、配合比と樹脂種で曲線が変わります。
- 高固形分ゆえ、1パスで200〜500μmのWet Filmを置け、自己平滑で豊満・高光沢を得ます。ここがスプレー系のPU/NCとの決定的な差です。
- PEは嫌気性硬化のため、空気に接する面は酸素阻害でベタつきます。パラフィン(融点約50〜58 ℃)をSurfaceへ浮かせ酸素を遮断しますが、蝋じみ・研磨、薄膜での浮きにくさが代償です。
- 工学的限界が明確です。塗膜は高Hardnessだが脆く、エッジ欠け、局所補修はほぼ不可。スチレンの強い臭気とVOCはGB 30981.2-2025(2026-06-01施行)で規制されます。現場や小ロットより自動化ライン向きです。
主要データ(検証可)
- Hardness:鉛筆Hardnessで3H以上。通常の溶剤系PUクリヤーを上回ります。
- 固形分・塗り厚:無溶剤/高固形PEは1パスで200〜500 μm、理論固形分はほぼ100%。国内PUは概ね50%前後。
- 使用時間(ポットライフ):Mixing直後からラジカルが走るため、概ね20〜30分以内で塗り終える。
- Room Temperatureゲル時間:25 ℃、o-フタル酸系樹脂、MEKP約2%+コバルト約1.5%で約18分(ゲル点の二重転化率21〜23%)。
- Temperature依存:15 ℃≈47分、25 ℃≈18分、35 ℃≈7.6分、45 ℃≈3.4分。5℃ごとに35〜40%短縮。
- 法規:溶剤系木部塗装はGB 18581-2020(PU系VOC≤600〜670 g/L、ニトロ≤700 g/L)。2026-06-01からGB 30981.2-2025へ統合され、SVOCと硬化剤・希釈剤等の副材も強制対象に、一部は20%超の引き下げ。
1. 構成と命名:三成分反応系
1.1 各成分の役割
- 主剤(UP-R樹脂):多価アルコール+多塩基酸の縮合で得る、反応性二重結合を持つ線状ポリエステル。スチレンに溶けた粘調液で、固形分60〜65%、酸価20〜35 mgKOH/g、25 ℃Viscosityは数百〜1200 mPa·s。
- 反応性希釈剤兼架橋剤(スチレン):Viscosityを下げつつ重合して網目に入る。「無溶剤・高固形」の由来であり、臭気とVOCの主要因でもある。
- 開始剤+促進剤:開始剤は有機過酸化物(MEKP、シクロヘキサノン過酸化物)、促進剤はコバルト塩(オクタン酸コバルト、Co約0.6〜1%)。レドックス系で過酸化物の分解TemperatureをRoom Temperature域へ下げます。
1.2 樹脂種と規格
二塩基酸によりo-フタル酸型、イソフタル酸型、ビスフェノールA型に大別。命名と基本諸元は規格群GB/T 24148「プラスチック—不飽和ポリエステル樹脂(UP-R)」(第1部命名、第4部Viscosity、第7部=GB/T 24148.7-2014Room Temperatureゲル時間)によります。
2. 硬化機構:ラジカル共重合の三段階
2.1 開始と促進
過酸化物単独の臨界Temperatureは概ね60 ℃超でRoom Temperature硬化は困難ですが、還元型の促進剤(コバルト)により分解活性化エネルギーが数十kJ/molへ下がり、Room Temperatureでラジカル生成が続きます。使い捨てMixingと精密計量が前提です。
2.2 ゲル—成型—後硬化
三段階:ゲル(流動性を失い弾性ゲルへ、臨界架橋Density)→ 成型(変形なく型から外せるHardnessと形状)→ 後硬化(諸特性が安定し高転化率へ)。
2.3 収縮と内部応力
スチレン重合と架橋で分子間距離がファンデルワールス長から共有結合長に縮み、体積収縮が起きます。厚膜の高発熱と重なり内部応力が溜まり、エッジのやせ・下地際出し、濡れ性・層間密着への要求が上がります。低発熱設計、一回塗り厚の管理、「PE下地+靭性トップコート」の複合で対処します。
3. ゲル時間の定量制御(工事の要)
下表はo-フタル系樹脂、MEKP(有効酸素約9%)+オクタン酸コバルト系で、GB/T 24148.7-2014に準拠した公開測定例です。オーダーと傾向の把握用で、自社樹脂と温Humidityで再校正してください。
3.1 Temperatureの影響
| Temperature(℃) | 15 | 20 | 25 | 30 | 35 | 40 | 45 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ゲル時間(分) | 47.2 | 29.6 | 18.4 | 11.7 | 7.6 | 5.1 | 3.4 |
5℃ごとに約35〜40%短縮。冬季は加温か促進剤増、夏季は冷却か減量が必要です。
3.2 開始剤/促進剤の配合比の影響
| 配合(樹脂に対し%) | 0.5 | 1.0 | 1.5 | 2.0 | 2.5 | 3.0 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 開始剤 MEKP(分) | 76.3 | 35.7 | 24.1 | 18.4 | 14.2 | 10.8 |
| 促進剤 コバルト(分) | 42.3* | 26.7 | 18.4 | 12.5 | — | 9.1 |
*コバルト0.2%時は約88.5分。過剰はケージ効果で利得が鈍化し、初期発熱が急峻化して応力・不均一硬化を招きます。
4. 厚塗り・カーテンコート
1パス厚膜:スチレンは揮発せず反応するため、タレやピンホールなく200〜500μmを置け、自己平滑で豊満なピアノ調光沢が得られます。カーテンコート:高光沢平板の量産はカーテンコート(淋引き)が主流。スリットから連続した塗料の膜(カーテン)を落とし、ワークを一度通します。高塗りでのタレPreventsは、チクソトロープ(ヒュームドシリカ、有機ベントナイト)とViscosity・平滑のバランスで決まり、ロール転写より許容窓が狭い点に注意します。嫌気性とパラフィン:PEは嫌気性硬化。パラフィンがSurfaceに浮いて酸素を遮るため、硬化後に研磨・バフ仕上げが必要、かつ蝋が下地へ移行して密着を落とし、薄すぎると蝋が浮きません。
5. 樹脂系との比較
| 観点 | PE | PU | NC | UV |
|---|---|---|---|---|
| 硬化機構 | ラジカル共重合 | イソ+水酸基 | 溶剤揮発 | 紫外開始重合 |
| 塗膜Hardness | 高(≥3H) | 中〜高 | 中〜低 | 中〜高 |
| 塗り厚/豊満 | 高・1パス | 多層必要 | 薄・多層 | 高(1パス) |
| 靭性/耐衝撃 | 脆い寄り | 靭い | 柔軟 | 処方次第 |
| 補修性 | 局所補修困難 | 可 | 容易 | 仕様次第 |
| VOC・臭気 | 高(スチレン) | 中〜高 | 高 | 低 |
| 代表的用途 | 高光沢平板・天板 | 内外木部 | 古色・オープンポア | ライン向け平板 |
6. 工学的限界:なぜライン向きか
脆性とエッジ:高架橋はHardnessと引き換えに伸びが乏しく、衝撃や下地の動きで割れ、鋭角・エッジが欠けます。尖角を避ける設計か、「PE下地+PU/UVトップコート」の複合設計へ。局所補修がほぼ不可:加飾後の上塗り・中間研磨に気を遣い、部分補修跡が目立つため全面手戻りが前提。初回歩留まり依存となり、清浄度・防塵・計量管理が物を言います。スチレンと法規:スチレンは反応剤であり、同時に強臭・刺激のVOCです。換気と防護、火気厳禁。溶剤系木部塗装はGB 18581-2020に従い、2026-06-01からGB 30981.2-2025(工業塗装有害物質限量の統合規格、SVOCと硬化剤・希釈剤・着色ペースト・副材を強制対象に追加、一部20%超の引き下げ、C/NC標識)へ。溶剤系木部塗装はCCC対象(CNCA-C21-01:2024)。計量とロット一致性:三成分の配合を誤ると未硬化・異常硬化します。Temperature・Humidity・下地・ロットの影響が大きいため、定量ポンプ/オンラインMixing、当番温Humidityでの小規模校正、トレーサビリティ用の検体保存が推奨です。
7. 選定と工事チェックリスト
- 成形適合:高光沢の平板・天板ならPEが有効。異形部品や現場補修前提ならPUを推奨。
- まず自社樹脂でゲル時間曲線を校正し、MEKP/コバルト量と作業窓を決める。
- 厚塗りでのタレPrevents:チクソトロープと平滑剤のバランスで200〜500μmを検証。
- 酸素対策の選定:パラフィン封止(後の研磨前提)か、UV/遮膜トップで蝋を回避。
- 法規を前倒しで:GB 30981.2-2025/GB 18581-2020に対しVOC・ベンゼン系・Heavy metals・SVOCを確認し、CMA/CNAS試験報告の実測値を得る。
よくある質問(FAQ)
Q1:PEとPUの決定的な違いは?
硬化経路です。PEはスチレンと樹脂の二重結合をラジカル共重合させて架橋網目を作ります。溶剤は反応し固形分はほぼ100%なので1パスで厚膜が置けます。一方PUはイソシアネートと水酸基の付加で硬化し、固形分は50%前後で多層が必要です。PEはHardnessと豊満に優れる反面、脆く補修しづらく、PUは靭性と補修性に優れます。
Q2:なぜPEのSurfaceはベタつき、パラフィンが必要なのですか?
PEは嫌気性硬化で、空気に触れる界面は酸素阻害により完全には硬化しません。パラフィンを加えると硬化時にSurfaceへ浮き、酸素のバリアを作って「空気遮断」を材料自身に担わせる仕組みです。代償に蝋じみが出て高光沢には研磨・バフ仕上げが必要になり、薄膜では蝋が浮きません。
Q3:ゲル時間を実生産でどう管理しますか?
Temperatureと配合比を主要変数に扱います。GB/T 24148.7-2014に準拠して小規模試験を行い、自社樹脂の「Temperature—ゲル時間」曲線を描きます。冬季は昇温か促進剤を増やし、夏季は降温か減量、ポットライフをタクト計画に組み込みます。促進剤過剰は初期発熱の急峻化と応力を招きます。
Q4:PEは環境的にまだ使えますか?基準は何が変わりましたか?
臭気とVOCの主因はスチレンで、水系やUVに比べ環境負荷は高くなります。溶剤系木部塗装はGB 18581-2020に従い、2026-06-01からGB 30981.2-2025へ統合。SVOCと副材が強制対象に加わり、一部20%超の引き下げ、C/NC標識が加わります。溶剤系木部塗装はCCC必須。合否は第三者試験報告の「実測値と限度値」で判定します。
Q5:PEを避けるべきシナリオは?
彫刻や異形の部品、現場補修が多い流通向け製品、エッジの多い耐衝撃部品、臭気・VOCに敏感な内装量産品では、PEの脆性・局所補修不可・スチレン放出が弱点になります。PUや水系、または「PE下地+UV/PUトップコート」の複合が妥当です。
Q6:厚塗り一回は本当に塗料とコストを節約しますか?
場合によります。PEは回数と乾燥待ちを減らし、スチレンは揮発せず損失も小さい。一方でカーテンライン、計量、防塵の設備投資が大きく、初回歩留まり要求とエッジ廃棄・手戻りが効いてきます。高光沢平板の量産では総合コストで優位になり得ますが、多品種小ロットでは不利なことが多いです。
最終更新:2026-10-18 | Kexin New Materials (Guangdong) Co., Ltd. 技術チーム。
参考規格(検証可):GB/T 24148「不飽和ポリエステル樹脂(UP-R)」群(うち GB/T 24148.7-2014 Room Temperatureゲル時間);GB 18581-2020(木部塗装有害物質限量);GB 30981.2-2025(工業塗装編、2026-06-01施行);GB/T 23986/23985(VOC)、GB/T 23990(ベンゼン系)、GB/T 34675-2017(放射線硬化VOC);GB/T 6739/ISO 15184(鉛筆Hardness);CCC実施規格 CNCA-C21-01:2024。ゲル時間数値はo-フタル系樹脂の公開測定例で、自社条件で再校正してください。