RTVシリコーン汚損フラッシュオーバー低減コーティング:撨水特性の移行と現場選定

2026-10-13 · 分類: Technical Knowledge

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電力設備用保護コーティング(サイト画像)

RTV汚損低減シリコーンコーティング(Room Temperature Vulcanizing=室温加硫型。DL/T 627-2018 では「がいし用Room Temperature硬化シリコーンゴム汚損低減塗料」と呼ばれる)は、室温で加硫するシリコーンゴムを主剤に充填剤と添加剤を配合し、磁器製またはガラス製がいしの面上に現場で吹き付ける機能性コーティングである。絶縁厚を増すのではなく、撨水特性・撨水特性移行・撨水特性回復という三つの経路によって、汚層が連続した導電性水膜をつくることを抑え、霧・露・霧雨のような高湿汚損環境で運転電圧に耐えさせる。

要点

  • 位置付け:RTVコーティングは既設のがいしを撨水化する改修手法であり、停電時間が短い、あるいは無停電でも作業できる。複合がいしへの取替、大沿面距離の汚損用がいしへの取替と並ぶ第三の路線である。
  • 機構:面上エネルギーが低いので水は展がず球状になる。さらに重要なのは、低分子シロキサンが塗膜から汚層側へ拡散し、汚層そのものを撨水化することである。通常の防食塗料と決定的に異なる点である。
  • 判定:撨水特性は IEC/TS 62073:2016 の散水法で HC1〜HC7 の七段階に区分する。DL/T 627-2018 の公開された解読ではHC1〜HC4 が要求域とされ、運用現場では HC6 への低下を点検・再作業の目安とすることが多い。
  • 選定:まず汚損度等級(等価食塩付着見け算 ESDD と非水溶性付着見け算)を確定し、IEC/TS 60815-2:2025 の参照統一固有沿面距離の区分(a 級 16〜20 mm/kV から f 級 50 mm/kV 超まで)に照らして、設計上さらに 10〜15 % の余裕を加える。
  • 限界:塗膜は構造部品ではない。紫外線、アーロージョン、粉塵の堆積で撨水特性は失われる。厚み、下地の清浄度、温空気中の水分の作業ウィンドウが、同一製品でも現場ごとに寿命が異なる理由を説明する。

主要データと規格値

  • 適用範囲(DL/T 627-2018):定格電圧 1000 V を超える交流系統の屋外絶縁、周囲の気温 −40 ℃〜+40 ℃、汚損条件下で運転されるがいし。直流系統は準用可。2019-05-01 施行、DL/T 627-2012 を置き換える。
  • 指触乾燥時間 ≤ 45 分(23 ± 2 ℃)、硬化物見け算の重さ ≤ 1.28 g/cm³ — DL/T 627-2018 に示される値(公開解説より整理)。
  • 体積抵抗率 ≥ 1.0×10¹² Ω·m(すなわち 1.0×10¹⁴ Ω·cm)、燃え易さ等級は FV-0 から FV-1 へ変更、撨水特性は HC1〜HC4 (附属書による等級)— 同上。
  • 撨水特性試験(IEC/TS 62073:2016):面上から約 250 mm の距離で毎秒約 1 mL を 15〜20 秒間散水し、10 秒以内に HC1〜HC7 の標準画像と照合する。DL/T 627 系の散水装置は 1 回 0.7〜1.0 mL、散水広がり角 50°〜70°。
  • 汚損度等級と ESDD(国内で常用される区分、公開研修資料より整理):等級 0 ≤ 0.03、Ⅰ 0.03〜0.06、Ⅱ 0.06〜0.10、Ⅲ 0.10〜0.25、Ⅳ 0.25〜0.50 mg/cm²。対応する沿面比距離は 14、16、20、25、31 mm/kV で、設計では 10〜15 % の余裕を 誸すむ。
  • 参照統一固有沿面距離(IEC/TS 60815-2:2025、交流系統用磁器・ガラスがいし。2025 年 12 月発行の第 2 版が 2008 年版に取って代わる):a 級 16〜20、b 級 20〜25、c 級 25〜31.5、d 級 31.5〜40、e 級 40〜50 mm/kV、f 級は 50 mm/kV 超で個別検討が必要。
  • フラッシュオーバーの発展:部分アークが沿面距離の約 70〜80 % まで達すると、一気に完全フラッシュオーバーへ転じることがある(公開研修資料)。汚損による事故は霧・露・霧雨の日に集中し、相対空気中の水分 85 % が臨界値として目安にされる。
  • 使用期間:公開資料では 5〜8 年が大半。メーカー資料では RTV 系は約 5 年で硬化が進み、フッ素樹脂系の恒久型は8〜10 年とされる。実際の判断は、測定された撨水特性等級と塗膜の外観によるべきである。

汚損低減の四つの路線の比較

何が優れているかではなく、既存のがいしの形式、汚損度等級、取れる停電窓、ライフサイクルコストを同時に確定したうえで、どの路線が実行可能かを問う表である。

観点 RTVシリコーン塗料 複合がいし 汚損用磁器・ガラスがいし 定期的な水洗い
作用面上を撨水化し導電水膜を抑えるシリコーンの傘が撨水特性と沿面距離を与える沿面距離を伸ばして汚損に耐える汚層を取り除き可溶性塩を減らす
沿面距離ほぼ変わらない(薄塗型)大きく増加大きく増加変わらない
停電窓無停電または短時間停電。作業ロボット事例あり取替に停電が必要取替に停電が必要専用にリスク管理条件を満たせば無停電洗浄が可能
持続期間公開資料で 5〜8 年、撨水特性の定期点検を伴う製品寿命の間有効製品寿命の間有効清掃周期のみ。数か月から 1〜2 年
主な劣化チョーキング、ひび割れ、付着喪失、アーク侵食、汚層が塗膜を覆うと親水化シリコーンの老化、侵食、界面絶縁の破壊汚損が堆積すれば結局清掃が必要水質と作業上のリスク管理リスク
向く場面汚損度が上がったが構造を変えられない設備新設路線または一括更新過酷汚損地域の新建で非維持が要求される案件汚層が塩分主体で接近しやすい事業所

汚損フラッシュオーバーの成り立ちと RTV が介入する点

プロセス①:汚層の堆積

産業粉塵、海塩粒子、道路粉塵、農業粉塵が重力と電界の影響でがいしの面上に付着し、可溶性塩と不溶性灰分からなる層をつくる。工学的には等価食塩付着附着量(ESDD、汚層の伝導分を NaCl に換算し面上で除した値、mg/cm²)と非水溶性付着見け算で表す。

プロセス②:吸湿による導電水膜

乾燥した汚層はほとんど導電しない。霧・露・霧雨が汚層を湿らせ、可溶性塩が水に溶けて導電経路を形成し、漏れ電流が増大する。これが雷サージによるフラッシュオーバーと異なる点で、運転電圧で発生する。親水的な磁器・ガラスの釉面では水が一つの膜につながるため、面上が疎水的かどうかが電流の大きさを決める。

プロセス③:乾燥帯と部分アーク

ジュール熱が局所的に水分を蒸発させ、高抵抗の乾燥帯が生じる。電圧が乾燥帯に集中して絶縁が破壊され、部分アークが発生する。アーク通道は抵抗が低いため、残り湿潤部の電流見け算がさらに上がり、正のフィードバックが成立する。公開研修資料では、アークが沿面距離の約 70〜80 % まで達した点が転換点とされる。

RTV の三つの作用経路

①撨水特性:ポリジメチルシロキサン(Si–O–Si)の主鎖がメチル基を外側へ向け、面上エネルギーは概ね 20〜24 mN/m の領域となり、水は孤立した粒になる。②撨水特性移行:低分子シロキサンが汚層や隣接する磁器面へ拡散・移行し、汚れた面自体を撨水化する。IEC/TS 62073 はこの移行と回復を明示しており、汚損した既設がいしに作業しても効く理由である。③撨水特性回復:湿潤やアーク作用の後、シロキサン鎖セグメントが再配列して撨水特性は一部自然に戻ることがある。ただし深いチョーキング、アーク侵食、厚い粉塵による機械的な覆い隠しは回復せず、再作業となる。

選定:まず汚損度等級、その後に塗膜系

汚分布図を読む

汚損度等級は、現場で測定した ESDD と非水溶性付着見け算、系統の汚分布図、運転経験の三者を突き合わせて決める。GB/T 26218.1-2010(IEC/TS 60815-1:2008 を修正採用、2011-01-14 発行・2011-07-01 施行)は定義と一般原則を示し、磁器・ガラスがいしの具体的な的な区分は GB/T 26218.2 と IEC/TS 60815-2:2025 にある。沿岸部、化学工場、セメント工場の回廊は隣の農地より一段〜二段高いことが多く、路線が等級の境界をまたぐ場合に塗布の効果がひといわ大きい。

薄塗型と恒久型

実務資料では、撨水特性主体の薄塗型と、ある程度の沿面距離増加も兼ねる厚塗型(恒久型、PRTV)に分けられる。違いは厚みと塗装回数、充填剤比率とアーク侵食耐性、そして再作業周期の三点にある。DL/T 627-2018 の公開解読では、新版が固形分要求を削除し、サンプルロットを ≤ 500 kg から ≤ 2000 kg へ緩和し、製品の等級Systemと燃え易さ等級を FV-0 からFV-1 へ変更したことが示される。すなわち評価の重心は配合パラメータから実使用Performanceへ移っている。名指しの厚み・塗布量・下塗りは、メーカーの TDS と DL/T 5727-2016 に従う。

人工汚損試験の読み方

塗膜系の汚損耐性は GB/T 4585 シリーズ(2024 年版、前版は 2004 年)の人工汚損試験で評価する。塩水霧法、固体層法などで試験品に定められた塩分と灰分を付着させ、昇圧法または恒圧耐性法でフラッシュオーバー電圧を測る。報告書を読むときは三点を確かめる—汚層の付着方式と実測 ESDD・非水溶性付着見け算、加水速度と散用水の電気伝導度、そして引用されている数値が耐電圧なのか 50 % フラッシュオーバー電圧なのか。名指し塩分が同じでも、固体層法と塩水霧法では十数%異なることがある。

現場作業と品質管理

下地処理と作業環境の窓

付着の緩い汚層、油脂、チョーキングした旧塗膜を取り除き、必要なら水洗いして完全に乾燥させる。残留水分と浮き粉塵は付着不良と吹き残しに直結する。室温加硫シリコーンは空気中の水分で縮合硬化するため、空気中の水分が低すぎると硬化が遅れ、逆にFloor上気温が露点を下回れば結露によって膨れと付着低下が起こる。霧・雨・結露の時間帯は作業を止める。

厚みと被覆の管理

TDS に示された回数と湿潤厚みで作業する。一度に厚く吹き付けると垂れ、内部まで硬化しない。硬化後厚みは DL/T 627 の附属書に記された切断法で確認し、鉄塔ごとに抜き取り記録を残す。傘の下側と球座のくぼみは専用の噴射角度とマスキングが必要で、特に吹き残しやすい箇所である。

検査と再作業の目安

硬化後に IEC/TS 62073 の散水法で HC 等級を照合する。新建の塗膜は通常 HC1〜HC2 にある。引渡し検査では、吹き残し、溜まり、垂れ、ひび割れ、傘の内側の被覆不足を目視と抜き取りで確認する。運用中は撨水特性が HC5〜HC6 まで低下した場合や、チョーキングとアーク侵食が顕著な場合に、点検を計画し再作業を手配する。

よくある質問

RTVコーティングは汚損用がいしの取替を兼ねられるか

汚損度等級の上昇が小さく、既存の沿面距離が要求に近づいている場面では、RTV の吹き付けは停電窓を大幅に短くして目標を達することが多く、既設設備の標準的な改修手段となる。等級が構造の許容域を大きく超える場合、たとえば e 級や f 級で統一固有沿面距離が 40 mm/kV を超える場合は、どの塗膜も沿面距離に代わることはできず、複合がいしまたは汚損用がいしへの取替が必要である。

作業後も清掃は必要か

必要だが、周期は延びる。撨水特性移行は導電水膜を抑える一方、堆積した汚層は次第に塗膜を覆い隠し、可溶性塩も持ち込む。運用現場では ESDD と撨水特性等級の二つを管理し、ESDD が等級の上限に近づくか撨水特性等級が明確に低下した時点で清掃または再作業を計画する。

HC1 から HC7 は何を意味するか

IEC/TS 62073:2016 の七段階:HC1 は孤立した粒状の水滴で水膜なし。HC2 は粒状だがやや変形。HC3 は水滴が扁平になり濡れ痕や筋が現れる。HC4 は不規則な形で一部が連結。HC5 は水が連続して濡れ域をつくる。HC6 は面上の大部分が水膜で覆われる。HC7 は一つの連続水膜で、親水面上と同じ挙動である。1 から 7 へ進むほど撨水特性を失うことを意味する。

RTV と PRTV の関係は

RTV は硬化方式(室温加硫)を表す総称である。PRTV は一般に現場で成形する恒久型の複合系塗料を指し、充填剤比率と厚みを上げることで長い再作業周期とある程度の沿面距離増加を得る。代償に作業・硬化条件が厳格になり、局所的な補修が難しくなる。規格、厚み、判定指標が異なるため、名称ではなく適用規格(DL/T 627 または明示された別の規格)と TDS の数値で比較・検収すべきである。

空気中の水分は高いほど硬化に良いのか

単調な関係ではない。縮合型の室温加硫シリコーンは空気中の水分で架橋するので、相対空気中の水分が低すぎると硬化は大きく遅れる。しかし空気中の水分が高すぎるかFloor上が結露すると、界面に水が閉じ込められて膨れと付着低下を生む。実務上の作業窓は「Floor上気温が露点より 3 ℃ 以上高い、降雨・結露がない、風速が管理できる」で定義するのが通例で、具体的な的な数値は製品説明書と DL/T 5727-2016 に従う。

厚みは厚いほどリスク管理か

必ずしもそうではない。厚みは撨水特性とアーク侵食耐性の間で釣合いを取る必要がある。薄すぎれば被覆が不完全でアークに貫通され、厚すぎれば垂れと内部硬化不足が起こり、傘に沿った電界分布を変える可能性がある。TDS と設計値を基準とし、体感的な増し吹きの代わりに切断抜き取りで確認する。

直流系統に使えるか

DL/T 627-2018 は交流系統用がいしについて書かれ、直流は準用可能と付記している。直流では定電圧成分のために汚層の堆積とフラッシュオーバーの発展過程が異なり、ESDD と沿面距離の対応関係はそのまま移せない(IEC/TS 60815-4 系参照)。直流設備は独自の汚損試験を行うか直流向けの選定指針で検算すべきで、交流の結論を流用してはならない。

汚損した旧がいしにそのまま吹き付けられるか

まず清掃する。低分子シロキサンは確かに汚層へ撨水特性を移行させるが、それは塗膜が下地に付着して連続膜を形成できることが前提である。厚く緩んだ粉塵、油脂、チョーキング層は付着を破壊し、作業後に局所的な剥離を生む。下地処理の要求は DL/T 5727-2016 と作業説明に記されている。

更新日時:2026-10-13|技術編集:Kexin New Materials(広東)有限公司 / Kexin New Materials (Guangdong) Co., Ltd.供給条件は EXW / FOB を基準とする。値は公開規格と文献から整理したものであり、設計判断は設計図書と規格本文に従うべきである。

出典:DL/T 627-2018「がいし用Room Temperature硬化シリコーンゴム汚損低減塗料」(DL/T 627-2012 を代替、2019-05-01 施行、ICS 29.080.10)、DL/T 5727-2016「同 現場作業技術規範」、GB/T 4585「交流系統用磁器・ガラスがいしの人工汚損試験」、GB/T 26218.1-2010(IEC/TS 60815-1:2008 を修正採用)、IEC/TS 60815-2:2025(2008 年版を置き換える第 2 版)、IEC/TS 62073:2016「がいしの面上の撨水特性測定指針」、および公開の電力研修資料とメーカー資料の汚損等級・使用期間に関する数値。「公開解説より整理」と注記した項目は規格検索プラットフォームの二次資料であり、購入・検収の前に規格本文との突合を要する。

ラベル: #工業塗料 #Industrial Coatings #塗料技術文献 #防食塗料