プルオフ法(引張付着)による防食塗装の検収:判定値と破壊形態

2026-11-04 · 分類: Technical Knowledge

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プルオフ法による防食塗装の検収:判定値と破壊形態

プルオフ法(引張付着試験、中核規格は ISO 4624:2023 と GB/T 5210-2006)は、硬化した塗装面にMetalダミー(試験柱)を接着剤で垂直に接着し、約 1 MPa/s の速度で垂直引張応力を負荷して、塗膜系が素地から剥離するまでの強度を MPa で定量測定する破壊検収試験です。

よくある場面から見てみます。沿岸鋼構造プロジェクトの完工 3 か月後、上塗りが溶接線の両側で板状に浮き上がり、発注者・Application者・塗料メーカーの三者で主張が割れました——メーカーは系統設計に問題なし、Application者はFilm Thicknessは規定どおりと主張。裁定の拠り所は外観ではなく二つの事実です。現場のプルオフで測った強度値と、破断面における各破壊形態の面積比率。数値は「付着力がどれだけあるか」を、破壊形態は「弱点がどの層か」を答えます。この二者がそろって初めて検収の完全な判定になります。

1. プルオフ法:定義・適用場面と TL;DR

プルオフ法は塗膜系を一塊として「引き抜く」試験です。破断はダミー、接着剤層、各塗層、素地界面からなる直列系の中の比較的弱い面で起こるため、単位付きの定量値が得られると同時に、系内の弱点層も浮かび上がります。車内・現場を問わず、エポキシ、ポリウレタン、フッ素、ポリアスパルタ酸などの多層重防食用途(系統の考え方は本サイトの厚膜エポキシガラスフレーク塗料の稿を参照)に加え、コンクリート素地や封孔処理した溶射Metalめっき系(溶射亜鉛・アルミ皮膜の稿を参照)にも適用できます。

  • 定量結果:引き離し強さを MPa で報告。標準のダミー径は 20 mm、負荷面積は約 314 mm²、測定レンジは 0–20 MPa が一般的です。
  • 規格群:ISO 4624:2023 が試験方法 A/B/C を規定。中国の現行規格 GB/T 5210-2006 は ISO 4624:2002 と同等(IDT)。ASTM D4541 はMetalなどの剛性素地、ASTM D7234 はコンクリート向けです。
  • 現場検収手順:鋼構造防食塗装系の付着・凝集強さの検収と抜き取りは ISO 16276 シリーズ——16276-1 がプルオフ、16276-2:2025 がクロスカットと X カットに対応します。
  • 数値の目安:バラストタンク塗膜は試験室試験後 3.5 MPa(IMO PSPC)、鋼構造重防食系の現場プルオフは 5 MPa、コンクリート素地は 1.5 MPa。いずれもプロジェクト仕様書が優先です。
  • 判定は二本立て:「数値が下限以上+破壊形態が説明できる」の両方が必要。破壊形態 A(界面の付着破壊)はただちに不合格を意味しません。
  • 無効試験を見分ける:接着剤破断・切込み不足・偏心荷重などでは数値を数えてはいけません。第 8 節を参照。

2. 規格の拠り所:ISO 4624、GB/T 5210 と関連規格群

プルオフ法は特定メーカーの独自手法ではなく、国際規格から各国規格、試験試験方法から現場検収まで一気通貫でつながった規格チェーンです。どれを使うかは、試験室での適性評価か、現場での検収かで決まります。

ISO 4624:2023「Paints and varnishes — Pull-off test for adhesion」は三つの試験方法を規定します。試験方法 A は 2 個のダミーで試験片を挟む方式で、剛性・可撓性の両素地(薄板、プラスチック、Wood)に適用。試験方法 B は塗装面側のみから 1 個のダミーで引く方式で剛性素地限定。試験方法 C はダミーの一方を塗装済み素地として使う方式です。引張中の素地変形を避けるため、薄い素地はサンドイッチ構造にするのが一般的です。

GB/T 5210-2006「色漆和Clearcoat プルオフ方式付着力试验」は ISO 4624:2002 を同等採用(IDT)した現行規格で、2007-02-01 実施、GB/T 5210-1985 を置き換えました。中国の検収文書で「GB/T 5210 により付着力を試験」とあれば、この試験方法群を指します。

ASTM 系:ASTM D4541 は携帯型引張試験器による塗膜の引き離し強さ測定(Metalなどの剛性素地)、ASTM D7234 はコンクリート上の塗膜の引き離しに特化します。装置と接着剤の考え方は ISO と近いものの、試験片の細部と結果の表現が異なるため、規格をまたいだ数値比較は慎重に。

ISO 16276 シリーズは鋼構造防食塗装系への現場適用を担い、検査区域・抜き取り計画・合否判定基準を規定します。16276-1 がプルオフ検収、16276-2(2025 年版)がクロスカットと X カット検収です。IMO 決議 MSC.215(82)(PSPC)はバラストタンク塗膜に義務要件を課し、試験室試験後の付着下限 3.5 MPa は引用頻度の高い数値です。

3. 原理:垂直引張応力と荷重の換算

物理は単純です。引き離し強さ σ = F / A。F は剥離瞬間の引張力、A はダミーの負荷面積。「垂直」を強調するのは理由があります。偏心した引張では応力がダミーの片側に集中し、読み値が系統的に低く出ます。現場データ異常の定番の原因です。

3.1 ダミー径・負荷面積・レンジの選び方

ダミー径が負荷面積と装置がカバーできる強度範囲を決めます。径が小さいほど同じ荷重で応力が大きくなり、高付着系に向く。径が大きいほどコンクリートのような低強度素地に向きます。

表 1 代表的なダミー径・負荷面積・測定レンジ(主要携帯プルオフ試験器の公開技術資料ベース)
ダミー径(mm)負荷面積(mm²)測定レンジ(MPa)典型的な用途
1078.50–80高付着系、溶射Metal皮膜の密着強度
14153.90–40高強度エポキシ、厚膜多層系
20314.20–20一般防食塗膜系(標準構成)
501963.50–3.5コンクリート素地、低強度塗膜

換算例:20 mm ダミー(A ≈ 314 mm²)で 5 MPa を出すのに必要な引張力は 314 mm² × 5 N/mm² ≈ 1571 N(約 1.57 kN、160 kgf の重りに相当)。逆に仕様下限が 5 MPa なら 20 mm・0–20 MPa のレンジで十分で、溶射亜鉛・アルミのような高密着系では 10 mm ダミーに切り替えてレンジを飽和させない工夫が必要です。

3.2 負荷速度と装置Precision

負荷の基本思想は「連続・緩慢・再現可能」。典型的な速度は約 1 MPa/s で、携帯器の設定可能範囲は 0.1–1.5 MPa/s 程度が一般的です。速すぎると粘弾性の塗膜が変形する前に破断して脆い値になり、遅すぎるとクリープで読みが drift します。装置は分解能 0.01 MPa・Precision ±1% フルスケール程度が一般的で、計量 traceability のある装置で定期的に校正します。前置き項目——Film Thickness・可溶性塩——も合格していることが前提で、不適合素地での付着試験は無意味です。本サイトのBresle 法による可溶性塩採取とブラスト Sa2.5 と粗さ管理の稿を参照してください。

4. 現場手順:7 つのキーステップ

  1. 測点選定:平面部を選び、溶接部・自由端・たれ・補修部を避ける(実務慣行)。1 点で結論を出さず、1 グループ通常 3 個以上、係争時は 5 個に増やす。
  2. 環境確認:塗面は清浄乾燥、素地Temperatureは露点より 3 °C 以上高く、雨雪・結露を避ける(一般的判定基準)。気温・Humidityを記録。
  3. ダミー前処理:接着面を研磨して脱脂。Ra 30–50 μm 程度にして接着面積を確保するのが実務です。
  4. 接着:塗膜に合わせて接着剤を選定(4.1 参照)、接着剤層を約 0.2 mm 以内に、垂直に位置合わせして空気を押し出し、データシートどおり十分硬化させる。
  5. 切込み:ダミー外周の塗膜を素地まで貫通して切り、試験面積外の塗膜を切り離す。切れ残りは有効負荷面積を水増しします。
  6. 引張:装置を据え付けて芯合わせし、約 1 MPa/s で連続負荷。剥離するか、仕様書の設定上限に達するまで。
  7. 判読・記録:数値(MPa)、破壊形態と面積比率、測点位置、日付、装置番号、接着剤種を記録。第 9 節に従って測定孔を補修。

防食塗装を施した工業部品の表面状態

4.1 接着剤の選定と接着剤層の厚み

接着剤はプルオフ試験の「見えない変数」で、原則は二つ。硬化後の接着剤強さが想定付着力を上回ること(さもないと接着剤が先に破断して試験無効)、そして硬化過程で被測定塗膜を膨潤・侵蝕しないこと。代表例は三系統です。速硬化シアノアクリレートは薄塗膜・平滑面・当日出力向け。二液型エポキシは厚膜・粗面・高強度系向け。ホットメルト系は弾性塗膜など可撓性の被測定物に使うと接着層応力を抑えられます。接着剤層が厚すぎると硬化が遅く、収縮も大きく、切込みに染み込んで周囲の塗膜を「架橋」して読みを水増しします。だから実務では約 0.2 mm 以内に抑え、接着直前に切込みを入れるのです。

4.2 切込み・引張・破断面の判読

切込みは接着剤硬化後に入れます。刃はSurfaceに垂直、一回の走刀で切り切る。厚膜系は段階的に深さを増します。引張完了後、直ちに両破断面を撮影。破断面は破壊形態判読の一次証拠で、触れたり拭いたり再汚染したりすると比率が狂います。単純なグリッド法で各破壊形態の面積比率を推定し、「数値+比率」を併記します。例:「5.2 MPa(B 約 80%、A 約 20%)」。

5. 破壊形態の判読と結果の表現

同じ引き離し強さでも、どこで壊れたかで工学的意味はまったく変わります。規格の版ごとに記号の約束が多少異なるため、下表は中国の検収文書で一般的な A/B/C/D の使い方に従い、適用時は採用版の条文が優先されます。

表 2 破壊形態コードと対応(GB/T 5210 系検収文書の一般的用法)
記号破断位置工学的意味対応
A塗膜/素地界面付着破壊。数値=界面付着強さ数値が下限以上なら合格
B塗膜内部塗膜の凝集破壊。界面結合が塗膜本体より強い数値が下限以上なら合格
C接着剤層内部接着剤の凝集破壊。多くの運用では有効接着剤強さの上限近く。より強い接着剤で再確認
Dダミー/接着剤界面または接着剤/塗膜界面接着失敗。試験無効接着剤を替えて再試験
層間破壊多層系の層と層の間層間付着が弱いリコート間隔と層間汚染の記録と合わせて分析

結果は数値と比率を併記します。例:「5.2 MPa(B 80% / A 20%)」。全 A で数値合格なら界面付着が仕様下限を満たしたこと。B が多い(塗膜本体が先に壊れた)なら界面に余裕があるサイン。層間破壊が出たら、補修判断の前にリコート間隔と層間汚染を確認します。層間の問題は塗料そのものより工事ウィンドウに原因があることが多いからです。

6. 合格下限の目安と判定の使い分け

付着力の合格値に産業横断の統一強制値はなく、仕様書・発注者文書が系統と環境ごとに下限を決めます。下表は引用頻度の高い目安を集めたもので、契約時はプロジェクト仕様書が優先です。

表 3 プルオフ合格下限の目安(プロジェクト仕様書と採用版規格が優先)
場面一般的な下限根拠・出典メモ
バラストタンク塗膜(試験室試験)3.5 MPaIMO PSPC(MSC.215(82))で広く引用される目安
鋼構造重防食系(現場プルオフ)5 MPaNORSOK M-501 など海工系仕様書の慣行値
コンクリート上の塗膜1.5 MPaASTM D7234 の試験方法Systemにおける業界慣行値
工事内自己検査(クロスカット)ISO 2409 で 1 級以内厚膜系は定量目的でプルオフへ切替

船舶バラストタンクでの重防食塗装の現場吹付け施工

6.1 バラストタンク PSPC と海工系仕様書

IMO PSPC はバラストタンク塗膜に 15年の目標寿命を求め、設計乾燥Film Thickness 320 μm(2 回塗りで各 160 μm)、Film Thicknessの 90/10 ルール(読みの 90% が 320 μm 以上、残りも 256 μm=設計の 80%以上)、素地調整 Sa2.5、エッジの面取り半径 2 mm 以上、試験室試験後の付着下限 3.5 MPa を課します。NORSOK M-501 の類の海工・橋梁仕様書は鋼構造系の現場プルオフ下限を 5 MPa とするのが通例で、高力ボルト摩擦面のように滑り係数の要件がある部位は塗料選定と検収に別の制約が付きます。本サイトの高力ボルト摩擦面の塗装と滑り係数の稿を参照。

6.2 コンクリート素地と工事内自己検査

コンクリートは低強度で多孔の素地です。引き離しの破断は塗膜界面ではなくコンクリート表層のモルタル本体で起こることが多く、報告には「素地凝集破壊」と明記します。このときの数値は純粋な付着力ではなく素地表層強さを反映します。コンクリート塗装系統の設計要点(アルカリ性・封止プライマー)は本サイトのコンクリート用シールプライマーと耐アルカリ上塗りの稿を参照。工事内の速やかな自己検査にはクロスカットがよく使われます。第 7 節の比較を参照。

7. プルオフ・クロスカット・X カットの使い分け

三つの試験方法は受け持ち範囲が違います。クロスカットは速く、級判定で数値を出さず、薄塗膜の自己検査向き。X カット(ASTM D3359 試験方法 A)は切る回数が少なく、やや厚い塗膜の迅速判定向き。プルオフは定量・裁定向きで、検収と要因分析の物差しです。

表 4 三つの付着試験試験方法の比較
項目プルオフクロスカットX カット
結果の形式定量(MPa)定性 0–5 級(ISO 2409)定性
典型適用Film Thickness全System。250 μm を超える厚膜多層も可単層で約 250 μm まで(1 mm 間隔の帯)やや厚い塗膜の簡易判定
主要規格ISO 4624:2023 / GB/T 5210-2006 / ASTM D4541ISO 2409 / GB/T 9286ASTM D3359 試験方法 A
破壊性局所穴・補修要小面積の切格小面積の切欠き
代表的用途検収・裁定・要因分析工事内自己検査・選別現場の速やかな判定

注:プルオフとクロスカットの結果は相互換算できません。前者は垂直引張の強さ、後者は切格後にテープで剥がれた面積の百分比評価で、応力状態が異なります。仕様書がプルオフ検収を指定した場合、クロスカットは工事内参考にとどまります。本サイトにはクロスカット試験の操作と級判定を専門に扱ったISO 2409 クロスカット試験と粗さ評価の稿もあります。

8. 無効試験の 5 類型と再試験ルール

  1. 接着剤層またはダミー界面の破断(D):接着剤の中、あるいはダミー/接着剤・接着剤/塗膜界面で切れます。接着剤が弱いか接着作業が不良で、数値は塗膜系を反映しません。
  2. 切込み不足:試験面積外の塗膜が負荷域に繋がったままになり、実効負荷面積が名目より大きく、読みは系統的に高く出ます。
  3. 偏心荷重:引張軸がSurface法線から外れ、応力が片側に集中。読みは低く、破断面は三日月形になります。
  4. 接着剤の硬化不足:低温でRoom Temperatureと同じ待ち時間だと接着剤強さが足りず、数値は塗膜ではなく接着剤の下限側に出ます。
  5. 面積と装置設定の不一致:規格外径のダミーを使いながら面積パラメータを切り替えないと、数値が一つの面積比ぶんずれます。

再試験ルール:無効を識別したら接着剤を替えるか操作を修正し、同一部材の近接位置で再接着します。無効の原因・回数・処置は報告書に記載。データがおかしいときは、塗膜を疑う前に芯合わせと切込み品質を確認します。現場の係争の多くは最終的に作業性の問題に落ち着くからです。

9. 試験後の補修手順

プルオフは破壊試験です。測定後の穴は系統どおり補修します。測定穴と周囲を浅いテーパ状に研磨・清浄化し、元の系統に従ってプライマー・中塗・上塗を順に重ね、各層のリコート間隔を守り、仕上がりFilm Thicknessを再測定して記録します。上塗りだけの点補修はよくある誤りです。穴の部分でプライマーと中塗が欠けると、湿気と塩分の進入経路になります。しかもそこは元々水の通り道に当たる位置です。

検収合格後の工業塗装表面

10. 要点データ一覧

  • 標準ダミー径 20 mm、負荷面積約 314 mm²、測定レンジ 0–20 MPa、装置分解能 0.01 MPa。
  • 負荷速度は約 1 MPa/s。携帯器の設定可能範囲は 0.1–1.5 MPa/s 程度。
  • 20 mm ダミーで 5 MPa に出すには垂直引張力約 1571 N(約 1.57 kN)。160 kgf に相当。
  • バラストタンクの試験室付着下限 3.5 MPa(IMO PSPC)、設計乾燥Film Thickness 320 μm、90/10 ルール、エッジ面取り半径 2 mm 以上。
  • 鋼構造重防食系の現場プルオフ下限は慣行で 5 MPa、コンクリート素地は 1.5 MPa(ASTM D7234 の慣行)。仕様書が優先。
  • クロスカットの単層適用上限は約 250 μm(1 mm 間隔の帯)。これより厚い塗膜はプルオフへ。
  • 接着剤層は実務上約 0.2 mm 以内。ダミー接着面は Ra 30–50 μm に研磨。
  • GB/T 5210-2006 は 2007-02-01 実施、GB/T 5210-1985 を置き換え、ISO 4624:2002 と同等(IDT)の現行規格。

11. よくある質問 FAQ

Q1:付着力はいくつ出れば合格ですか。

判定は二本立てです。数値が仕様下限以上、破壊形態が説明できること。引用頻度の高い参考値は、鋼構造重防食系の現場プルオフ 5 MPa、バラストタンク塗膜の試験室試験 3.5 MPa(IMO PSPC)、コンクリート上の塗膜 1.5 MPa(ASTM D7234 の慣行)です。判定の着地点は常にプロジェクト仕様書です。契約が 4 MPa なら 4 MPa で収め、ISO 16276-1 どおりの抜き取りを指定していればその表に従います。「業界慣行」を契約文書の代わりにしてはいけません。

Q2:破壊形態が A(界面付着破壊)なら不合格ですか。

いいえ。A は破断が塗膜/素地界面で起こったことを示すだけで、その数値自体が界面付着強さです。下限を満たしていれば有効で合格です。注意すべきは逆の極端で、B(塗膜本体が先に破断)が多いと「良さそう」に見えますが、塗膜本体の強さが仕様を下回っていればこれも拒否事由です。判定は「数値+形態」の同時成立であり、見栄えのよい破断面を追うことではありません。

Q3:接着剤の選び方と接着剤層の厚みは。

原則は二つ。硬化後の接着剤強さが想定付着力を上回ること、被測定塗膜を膨潤・侵蝕しないこと。薄塗膜・平滑面・当日データには速硬化シアノアクリレート、厚膜・粗面・高強度系には二液型エポキシ、可撓性塗膜には接着層応力を下げるホットメルト系。接着剤層は約 0.2 mm 以内に抑えます。厚いと硬化が遅く収縮も大きく、切込みに染み込んで周囲塗膜を架橋し読みを水増しします。データシートどおり十分に硬化させ、低温では待ち時間を延ばしてTemperatureを記録してください。

Q4:どんな場合に無効とし、再試験はどうするか。

五類型です。接着剤層やダミー界面での破断(D)、切込み不足、偏心荷重、接着剤硬化不足、ダミー面積と装置設定の不一致。見分ける特徴は順に、破断面がすべて接着剤、切込み外周の塗膜まで引きちぎれる、三日月形破断面、数値が接着剤の下限に張り付く、数値が一つの面積比ぶんずれる。再試験は接着剤を替えるか操作を修正して近接位置に再接着し、無効の原因・回数・処置を報告書に記載します。同一箇所で二回連続無効なら、装置と手順の点検のために中断すべきです。

Q5:試験後の穴はどう補修しますか。

元の系統どおりに復元します。浅いテーパ状に研磨・清浄化し、プライマー・中塗・上塗を順に重ね、各層のリコート間隔を守り、Film Thicknessを再測定して位置を記録。上塗りの点補修だけは禁物です。穴の部分のプライマーと中塗が欠けると湿気と塩分が直進します。補修記録は試験報告書の番号と紐付けて保守点検に備えます。測点選定の段階でエッジや溶接部を避けるのは、この補修性を含めた理由からです。

Q6:クロスカットで検収を代替できますか。

原則できません。クロスカット(ISO 2409 / GB/T 9286)は 0–5 級の定性評価で、単層適用は約 250 μm まで。工事内自己検査と配合選別に向きますが、厚膜多層系では刃が一回で貫通できず級判定が狂います。仕様書がプルオフ検収を指定した場合、クロスカットは工事内参考にすぎません。両者は応力状態が異なり、数値と等級の間に換算関係はありません。判定基準:検収試験方法は契約と仕様書の指定に従い、試験方法の異なる「同等判定」は裁定で採用されません。

Q7:低温・高湿環境でも測れますか。

環境は二つに効きます。接着剤の硬化と、塗膜-素地界面の状態。低温では接着剤の硬化が遅れたり不完全になったりし、数値は真の付着力ではなく接着剤の下限側に出ます。高湿と結露は界面に水膜を作り、数値を下げてばらつかせます。一般的判定基準は、素地Temperatureが露点より 3 °C 以上高いこと、雨雪・結露を避けること、環境温Humidityと接着剤硬化時間を記録すること。寒冷地での実施が不可欠な場合は低温硬化型の接着剤を使い、待ち時間を延ばし、逸脱条件を報告書に明記して判定者に確認を取ります。

Q8:コンクリート・曲面・溶射Metal面ではどうするか。

コンクリート素地は 50 mm ダミーと低レンジ、二液型エポキシを使い、モルタル本体で破断したら「素地凝集破壊」と明記します。曲面部材は自在継手付きのダミーで垂直受力を保つか、平らな区間に測点を移します。溶射亜鉛・アルミのような高密着系は 10 mm ダミーに切り替えてレンジ飽和を防ぎ、ダミー接着面は研磨して粗くします。三つの場面共通の判定基準は、垂直受力・素地まで貫通した切込み・想定値を上回る接着剤強さ。一つでも欠ければ数値は数えません。

12. 参考文献・出典メモ

  • ISO 4624:2023「Paints and varnishes — Pull-off test for adhesion」、ISO 公式サイトの規格概要(試験方法 A/B/C)。
  • GB/T 5210-2006「色漆和Clearcoat プルオフ方式付着力试验」、中国国家標準全文公開システムの収録情報:ISO 4624:2002 と同等採用、2007-02-01 実施、GB/T 5210-1985 を置換。
  • ASTM D4541「Standard Test Method for Pull-Off Strength of Coatings Using Portable Adhesion Testers」、ASTM D7234「…Pull-Off Adhesion Strength of Coatings on Concrete…」。
  • ISO 16276-1(プルオフ検収)と ISO 16276-2:2025(クロスカット・X カット検収):鋼構造防食塗装系の検査区域・抜き取り・合否基準。
  • IMO 決議 MSC.215(82)「Performance Standard for Protective Coatings(PSPC)」:設計Film Thickness 320 μm、90/10 ルール、Sa2.5、エッジ面取り半径 2 mm 以上、試験室付着 3.5 MPa。
  • 出典メモ:ダミー径・レンジ・分解能などの装置パラメータは主要携帯試験器の公開技術資料に基づく装置口径で、規格の強制値ではありません。5 MPa・1.5 MPa などの合格下限は仕様書の慣行値で産業横断の強制値ではありません。破壊形態の記号は ISO と ASTM の版間で約束が異なり、契約指定版の条文が優先されます。

Last updated: 2026-11-04
本稿は Kexin New Materials(広東)有限公司 / Kexin New Materials (Guangdong) Co., Ltd. 技術チームの執筆で、B2B 工事・購買の場面を対象にしています。貿易条件は EXW / FOB 建て。引用の際は出典を明記してください。

ラベル: #工業用塗料 #Industrial Coatings #塗料技術文献 #防食塗料